朝倉地域では、平成20年3月25日に「朝倉警察署管内安全・安心総合対策協議会」が設立されました。今回の会議では、新たに朝倉地域における安全・安心まちづくりへの目標が設定され、今後更なるこの運動の拡大が期待されます。
(1)あいさつ
福岡県 新社会推進部長 富安 節子
県では、これまで地域の自主的な防犯活動の充実強化に取り組み、安全・安心まちづくり県民運動を推進してきた。こうした取組により、今では、900を超える防犯団体が活動しており、平成21年度には、これを1,500団体に増やすことを運動の目標としている。
この県民運動をさらに充実・拡大していくために、県では「福岡県安全・安心まちづくり条例」及び「防犯環境指針」を制定・施行した。朝倉地区においては、この条例の制定を受け、朝倉警察署及び同署管内の朝倉市、筑前町、東峰村によって、安全・安心まちづくり県民運動の推進組織として本年三月二十五日に「朝倉警察署管内安全・安心総合対策協議会」が発足された。
そして、先ほど行われた「『安全・安心なあさくら地域』を実現する住民大会!」では、朝倉地区における安全・安心まちづくりへの取組姿勢が明らかにされ、今後、更なる県民運動の進展が期待されるところである。
この県民運動を真に地域に浸透させていくためには、住民の皆様のご支援をはじめ、関係各機関同士の緊密な連携と協力が不可欠である。本日の会議において関係機関の連絡と朝倉地域における安全・安心まちづくりの取組が益々進展していくことを期待する。
(2)福岡県安全・安心まちづくり条例、防犯環境設計指針、H20年度安全・安心まちづくり関連事業の概要
福岡県 新社会推進部生活安全課長 境 正義
(3)朝倉警察署管内の犯罪・交通事故実態等
朝倉警察署長 石井 直行
(4)各市町村における地域防犯活動への取組
朝倉市長 塚本 勝人
朝倉市では4つの安全に関する目標を設定している。
1つ目は交通安全。警察署・交通安全協会との連携のもと、飲酒運転の追放・街頭啓発・交通教室の開催を実施している。
2つ目は消防関係。消防署・消防団との協力し、防火・防犯パトロールや夜警の実施。
3つ目は防災関係。万が一の災害に備え、市職員の迅速な対応が出来るように災害対策マニュアルを作成している。
4つ目は防犯関係。地域ボランティアの方々による小中学生の登下校時及び夜間パトロールの実施。また、ストップ非行県民運動を活用し、公用車を青色回転灯装着車として杷木・甘木・朝倉各地区へ計3台を配備し、青少年育成会を窓口として、各地区の防犯ボランティアへ貸出して運行している。併せてパトロール時に使用するジャケットや帽子等も貸与している。市内全地域における自主防犯パトロールの立上げや、他の各種団体における青色回転灯装着車の活用を促し、地域における犯罪・事件の抑止に力を入れている。また、地域住民のみならず、市職員有志によるパトロール隊の編成も検討中である。
朝倉市は247平方kmという広大な面積に加え、甘木・朝倉・杷木と3箇所のインターチェンジを擁し交通のアクセスは良いが、逆に犯罪誘引の面で問題があると言える。このため広範な防犯体制を整えていく必要があると考えている。
筑前町長 手柴 豊次
当町でも「安全で安心なまちづくり」は大きな行政の目標として掲げており、住民のあらゆる階層の協力を得ながら推進しているところであるが、最近ではなかなか厳しいものがあると感じている。
まず1番目は地域社会の形成。最近では田舎でも「お互いが何をしているか分からん」という状況もあり、このことが犯罪の抑止という面で一番問題であると感じている。あらゆるハード面を整備しても、近隣社会を失っていては意味がないので、コミュニティの形成に力を入れているところである。
当町では小学校が1校あるが住民より南部にもう1校欲しいという声があり、学校の設置は難しいので、コミュニティの拠点として公民館を平成20年度に建設する予定。
2番目は環境面の整備。警察署の協力を得て、数年前から青色回転灯装着車を配備している。また、各地区で「ライトアップ作戦」と銘打って、2,660基の街灯を農作物への影響も配慮しながら設置を進めている。今年度には、これも警察署の協力を得て、夜須地区の交番を、目立つ国道沿いに新築移設する予定であり、犯罪の抑止効果となることを大いに期待している。
3番目は少年補導員・地区PTA・警察署等関係機関の連携を強化している。
また、防災面についても、昨年9月2日防災の日に、全町民を対象に警察・消防等関係機関の参加のもと、地震対応の防災演習を実施した。
いずれにしても「安全・安心まちづくり」のため、行政としてもさらに力を入れていく予定である。
東峰村長 高倉 秀信
東峰村はもともと犯罪や災害は少ないところであるが、近年、降雨災害・台風災害・西方沖地震などの発生や、数年前に小石原地区で郵便局強盗が発生するなど住民の不安は高まってきている。この中で、行政・住民・地域団体・2箇所の駐在所が一体となって村の安全を守ろうと様々に活動している。
1番目は、老人クラブ・PTA・学校による児童・生徒の安全を守る活動がある。それぞれが「孫を守る会」・「小石原っ子見守り隊」・「こども110番」を組織し活動を展開している。これらの活動は、日常生活の中で各自が出来る活動を出来る時間に行うというもので、この活動を通じて子どもたちとの挨拶や触れ合う機会が増え、高齢者の生き甲斐にも繋がっている。
次に、地域ボランティア団体による自主的な取組である。30年に及ぶホタルの育成活動を通じて子どもたちの情操教育や防犯活動、河川の清掃を行っていただいている。今では県下有数のホタルの里として知られるようになり、村の観光振興の一翼を担っている。このような活動が認められ、これまで県知事や国土交通大臣表彰を受けることが出来た。
最後に、2箇所の駐在所と消防団が連携し、毎月1日の消防ポンプ点検の折、村内を巡廻して拡声機による注意喚起を行っている。
6月からは朝倉警察署の協力のもと警察車両の参加を得られることとなっており、より一層の犯罪抑止効果を期待している。今後は青色回転灯装着車の導入も検討中である。
(5)他県の事例
山口大学 理工学研究科 准教授 瀧本 浩一
私自身が現場で様々な活動を通じて体験したことを少しご紹介したい。
例えば大阪では、自転車を利用して、地域住民が朝夕の登下校時間帯に「まわるんジャー」という名称で町内を巡廻する活動がある。一箇所に立って子ども達を見守るのではなく、遊撃隊としてパトロールカーのように自転車で子ども達を見守るという新しいスタイルを採っている。これは単に防犯のみならず、生徒の服装の乱れやたむろへの注意など、「地域の親」としての面も併せ持っている。
「地域見守りネットワーク」という活動では、それぞれの機関がバラバラに活動するのではなく、PTAと自治会が協力し、区の助成により小学校の近所に拠点をつくり研修活動などを行っている。別の地域では、この活動拠点の敷地内に交番を設けて警察と密接に連携を図っている例もある。
私の出身の田川地区では、「たがわ出歩き隊」が主に土日のショッピングセンターの駐車場でドライバーに対して車上狙いへの注意喚起を行っている。戦略的に特定の犯罪を狙って防止するという手法の一例である。
福岡地区・北九州地区では「ガーディアンエンジェルス」という若者の団体が、深夜出歩く若者に対して声を掛け、若者世代の先輩として様々なフォローを行っている。また、見廻りの際の実用的なスキルに基づいて参加者にアドバイスを行うなど、効果的な研修会も開催している。
行政では、福岡県がここ数年「防犯リーダー養成講座」を開催している。この講座の良いところは、参加者同士が横の繋がりを持って地域に戻っていくというところで、何か困ったことがあったらお互いに連絡し合うという共助のネットワークが出来ていくことである。この面では「他県の事例紹介」というよりも、福岡県が他県より進んでいるのでないかと思う。
(6)意見交換
朝倉地区交通安全協会 代表 山本 辰雄
私は今年88歳になり、交通安全協会の会長を努めて今年で37年になる。この際近年よく感じる事を述べさせていただくと、近頃世間の人々に「反省」がないと思う。ひとつの例を挙げれば、「空気と水と安全はタダ」という神話が未だ続いていると信じている人が多い。この中では自己防衛という意識は育たない。ハンドルを握る時にはいつも事故を意識する、というように交通マナーとルールを自ら体現することが大切である。「反省」のないところに世の「進展」はない!
朝倉市ボランティア団体 代表 井本 敏子
私は朝倉市甘木地区において毎月第3水曜日を「少年を守る日」に設定し、市から貸与されたジャンパーや青色回転灯装着車を利用して夕方と夜間に各1時間防犯活動に取組んでおり、パトロール中にこども達に声を掛けることの効果を感じている。また、甘木中学校区では月4回「オアシス運動」に取組んでおり、挨拶・服装の乱れ・交通マナーについて見守り活動を実践している。一方、地域住民しか知らない危険箇所を共有し、安全確保に努めている。
筑前町ボランティア団体 代表 友永 芳信
私は、地区の少年補導員・小学校のPTA役員・民生委員を務めている。人と触れ合うことが楽しく、家に居ることがほとんどないくらいこれらのボランティア活動に没頭している。
小学校の登校時、児童の見守り活動のため通学路に立ち安全指導を行っているが、ある時農家の方から「こどもを送迎する保護者のマナーが悪い」と強い調子で苦情を受けたことがある。やはりこどもだけではなく、大人が気を付けなければならないと感じた。
また、少年補導員として月1回地域を巡廻する際、町長さんの公用車を青色回転灯装着車に仕立てて利用させてもらうなど、役場や警察の協力を得て活動を続けている。
東峰村ボランティア団体 代表 一ノ宮 知視
私は東峰村の「ホタルを育てる会」の会長を務めている。この会は30年前に活動を開始し、現在30名の会員で河川の清掃や防犯活動など様々な活動に取組んでいる。
主な活動の1つ目は河川の清掃活動であり、ホタルの成育環境を守ることが会の大きな目的である。また、きれいな環境を維持することで犯罪の抑止効果にも繋がるという思いがある。
2つ目は小中学校でのホタルの生態講座の開催である。この講座を通じて子供たちと顔見知りになり、登下校時に挨拶ができ、コミュニケーションが図ることができる。
3つ目はホタル祭りの実施である。福岡県民手帳に「6月第1土曜日の開催」と紹介され定着している。会場の「棚田親水公園」には村外から数万人の見学者が訪れ、その際に村のガイドや安全確保に努めている。
(7)朝倉地域における「安全・安心まちづくり県民運動」の目標設定
朝倉警察署長 石井 直行
本日ご出席の朝倉市長・筑前町長・東峰村長に「朝倉警察署管内 安全・安心総合対策協議会」の立上げをお願いしたところ、気持ちよくご了解頂き、平成20年3月25日に発足の運びとなり大変感謝している。
まず、目標の1つ目は、各々の活動は地域に限定されたものである場合もあり、活動の広がりを持たせる意味で、朝倉警察署が一歩前に出て、例えば3自治体管内で少年街頭補導を一斉に実施するなどの行事を行いたい。その際には教育関係機関のご協力も是非お願いしたいと考えている。
2つ目は、3市町村の各小学校区全てにおいて民間ボランティア団体が組織されることを目標としたいと考えている。これについては朝倉警察署が後方から支援していきたい。
(8)閉会